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東京地方裁判所 昭和27年(ワ)3931号 判決

原告 前島一郎 外一七名

被告 オリエント製パン株式会社

一、主  文

1  被告会社の昭和二十七年三月九日の定時株主総会における昭和二十五年六月三十日現在の貸借対照表及び財産目録、並びに昭和二十四年七月一日から同二十五年六月三十日までの営業報告書、損益計算書及び利益金処分案を承認する旨の決議を取消す。

2  原告等の其の余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は四分し、その三を原告等の負担とし、その余を被告の負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は、

「(1)  被告会社の昭和二十四年十一月二十三日の定時株主総会における寺島優及び寺島英夫を取締役に選任する旨の決議が無効であることを確認する。

(2)  被告会社の昭和二十七年三月九日の定時株主総会における昭和二十五年六月三十日現在の貸借対照表及び財産目録、並びに昭和二十四年七月一日から同二十五年六月三十日までの営業報告書、損益計算書及び利益金処分案を承認する旨の決議を取消す。

(3)  右総会における佐渡貞子を監査役に選任する旨の決議が無効であることを確認する。

(4)  右総会における昭和二十六年六月三十日現在の貸借対照表及び財産目録、並びに昭和二十五年七月一日から同二十六年六月三十日までの営業報告書、損益計算書及び利益金処分案を承認する旨の決議が存在しないことを確認する。

(5)  訴訟費用は被告の負担とする。」

との判決を求め、その請求の原因として、

「(1)  原告は、いずれも被告会社の株主である。

(2)  被告会社は昭和二十四年十一月二十三日定時株主総会を開催し、右総会においては、寺島優及び寺島英夫を取締役に選任する旨の決議がなされた。被告会社定款第三十三条によれば、「取締役はその在任中自己所有の本会社株式五十株を監査役に供託すべし。」と規定せられ株主にあらざれば取締役に選任せられ得ない趣旨が明白に窺われる。しかるに右両名は右決議当時被告会社の株主でなかつた。しからば右決議は定款に違反し無効であるからここにその確認を求める。

(3)  被告会社は、昭和二十七年三月九日の定時株主総会において、

(イ) 昭和二十五年六月三十日現在の貸借対照表及び財産目録、並びに昭和二十四年七月一日から同二十五年六月三十日までの営業報告書、損益計算書及び利益金処分案を承認する旨の決議、及び

(ロ) 佐渡貞子を監査役に選任する旨の決議をした。

しかしながら右(イ)の決議については、次のような瑕疵がある。即ち総会の会日の一週間前からなすべき決算書類及び監査役の報告書の備置をなさず、決議に際し株主をして論議をつくさしめず、総会の招集通知の発せられた昭和二十七年二月十日以後株主名簿上名義を取得した者が議決に加わり、特別の利害関係を有する者というべき取締役寺島末吉、同寺島優、同寺島英夫の三名が議決権を行使している。よつてその取消を求める。

又(ロ)の決議については、選挙の方法によらず、議長一任の決議によりながら、議長は、議場において被選任者佐渡貞子の氏名を告知せずして議事を終了し、又当時被告会社の監査役の定員は一名のところ、現に木村栄次郎が監査役として在任中であつたから、同人を解任することなくしては、新たに佐渡貞子を監査役に選任するを許されなかつたのであつて、右決議は無効であるから、その確認を求める。

(4)  次に、被告会社の前記株主総会において、昭和二十六年六月三十日の貸借対照表及び財産目録並びに昭和二十五年七月一日から同二十六年六月三十日までの営業報告書、損益計算書及び利益金の処分案は上程せられることなく、従つてこれに対する決議も存在しなかつたものであるにもかかわらず、被告は右を承認する決議があつた旨の議事録を作つているから、右決議の不存在確認を求める。」

と述べた。

被告会社訴訟代理人は、請求棄却の判決を求め、答弁として、

「原告等主張の(1) の事実は認める。(2) 及び(3) の事実のうち、原告等主張の通り、総会の決議がなされたこと、取締役三名が議決権を行使したこと、及び原告等主張の株主総会開催当時木村栄次郎が監査役として在任していたことは認めるが、その余の事実を否認する。寺島優、寺島英夫は昭和二十三年頃から被告会社の株主であり、被告の定款では監査役の定員は一人に限られておらず、二人以内である。(4) の事実は否認する。昭和二十六年度分計算書類及び利益金処分の承認案は議題に上せられた上、承認されたものである。」

と述べた。

<立証省略>

三、理  由

(1)  (以下番号はすべて原告の請求原因の番号に対応する。)原告等がいずれも被告会社の株主であることは当事者間に争がない。

(2)  被告会社の昭和二十四年十一月二十三日の定時株主総会において寺島優、寺島英夫を各取締役に選任する旨の決議がなされたことは当事者間に争がなく、成立に争のない乙第五号証によれば、被告会社の定款第三十三条に原告主張のように取締役は在任中自己所有の被告会社株式五十株を監査役に供託すべき旨の規定があること明らかであつて、その趣旨とするところ、取締役は五十株以上の株主たることを要するにあると解するを相当とするけれども、右総会開催当時右両名が被告会社の株主でなかつた旨の原告本人村上清治郎の供述は後記各証拠に照して信用し難く、かえつて被告会社代表者寺島末吉及び原告本人木村栄次郎の各供述と成立に争のない乙第二、三号証の記載を考え合せれば寺島優及び寺島英夫は昭和二十三年十二月の被告会社の増資に際して株主となり爾来引つづき株主であることを認めるに充分である。そうすると同人等が右総会開催当時株主でなかつたことを前提として右決議が定款に違反し無効であるとする原告等の主張は失当である。

(3)  被告会社の昭和二十七年三月九日の定時株主総会において、原告等主張の(イ)(ロ)の決議がなされたことは当事者間に争がない。

(イ)の決議について。

取締役が商法第二百八十二条の規定による手続を遵守せず、計算書類及び監査役の報告書を総会前本店に備え置くことを怠るときは、取締役が同法第二百八十一条に掲げる書類の総会の承諾をえられないかも知れないより大きい危険を負担したまま総会に臨まなければならないだけで、かかる懈怠を以て総会の招集又は決議の方法の瑕疵ということができない。又総会の招集を受ける株主と総会の決議に加わる株主とは必ずしも一致しなければならない訳のものではないから、総会の決議に加わる株主の株主名簿上の名義の取得は、その総会の招集通知の発せられた後であつても少しも差支ない。したがつて、この二点についての原告の主張は主張自体理由がない。しかしながら、右決議について、取締役寺島末吉、同寺島優、同寺島英夫の三名が議決権を行使したことは当事者間に争がなく、而して取締役は計算書類承認決議につき特別の利害関係を有し議決権を行使することができないと解するのが相当であるから、右決議は、他の点についての原告の主張について判断するまでもなく決議の方法が商法第二百三十九条第五項の規定に違反し、取消を免れない。

(ロ)の決議について。

原告の全立証によるも、被告会社の監査役の定員が一名に限られていることはこれを認めることができず、却つて成立に争ない乙第五号証によれば、前記株主総会開催の当時効力を有した被告会社定款第二十五条には、監査役の定員が二名以内と定められていることが認められるから、佐渡貞子の監査役選任は、原告等の主張するように木村栄次郎が監査役として在任中になされたものであるけれども、何ら定款に違反するものではない。なお原告は、決議の方法について選挙によらず、且つ指名を一任された議長が議場において被選任者の氏名を告知しなかつたことを主張しているけれども、此の事実は決議の方法の瑕疵を主張するものであるから、決議無効確認の事由としては主張自体失当である。よつて、原告等の請求は採用しない。

(4)  次に、原告等は、請求原因(4) 記載の決議が存在しなかつた旨主張するが、本訴にあらわれた全証拠によるも右事実を認めるに足らず、却つて、成立に争のない乙第四号証の記載に被告会社代表者寺島末吉、原告本人木村栄次郎の各供述を綜合すれば前記総会には第一号議案として、「自昭和二十四年七月一日至昭和二十五年六月三十日及び自昭和二十五年七月一日至昭和二十六年六月三十日営業報告書、貸借対照表、財産目録、損益計算書、及び利益金処分案承認の件」が附議せられ議長取締役寺島末吉から右議案の内容の説明があり、監査役の調査報告を経て可決承認せられた事実が認められる。しからば、右決議の不存在確認を求める原告等の請求は失当である。

よつて、被告会社の株主として主文第一項掲記の決議の取消を求める原告等の請求を正当として認容し、その余の請求を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二条本文を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 小川善吉 岡田辰雄 宮本聖司)

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